青汁
青汁(あおじる)とは、ケール、オオムギ若葉、アシタバ、モロヘイヤなどの緑葉植物やクロレラなどを細かくくだき、しぼって作る汁をさす[3][4]。いわゆる健康食品の俗称であり、詳細な定義はない[5]。液体、粉末、サプリメント形状などの青汁製品が販売されており、単一の素材を原材料とするものや複数の素材を混合したもの、その他の野菜や果物を含むものなど、その種類は多岐にわたる[5]。個々の製品によって原材料や含有成分が異なるため、人における有効性や安全性は製品に依存する[3]。ビタミンKを多く含むものがあるため、ワルファリン (抗凝固薬)を服用している場合は注意が必要である[3][6]。
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 1,571 kJ (375 kcal) |
70.2 g | |
食物繊維 | 28.0 g |
4.4 g | |
飽和脂肪酸 | 0.55 g |
一価不飽和 | 0.10 g |
多価不飽和 | 2.08 g |
13.8 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(108%) 860 µg(93%) 10000 µg |
チアミン (B1) |
(27%) 0.31 mg |
リボフラビン (B2) |
(67%) 0.80 mg |
ナイアシン (B3) |
(40%) 6.0 mg |
パントテン酸 (B5) |
(26%) 1.31 mg |
ビタミンB6 |
(58%) 0.75 mg |
葉酸 (B9) |
(205%) 820 µg |
ビタミンC |
(1325%) 1100 mg |
ビタミンE |
(63%) 9.4 mg |
ビタミンK |
(1429%) 1500 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(15%) 230 mg |
カリウム |
(49%) 2300 mg |
カルシウム |
(120%) 1200 mg |
マグネシウム |
(59%) 210 mg |
リン |
(39%) 270 mg |
鉄分 |
(22%) 2.9 mg |
亜鉛 |
(19%) 1.8 mg |
銅 |
(9%) 0.17 mg |
セレン |
(13%) 9 µg |
他の成分 | |
水分 | 2.3 g |
水溶性食物繊維 | 12.8 g |
不溶性食物繊維 | 15.2 g |
ビオチン(B7) | 19.8 µg |
硝酸イオン | 0.7 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[2]。粉末製品 | |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
概要編集
健康食品として飲用される。液状のまま、もしくは水で溶かして飲用する乾燥粉末や、そのまま服用する錠剤状のものも存在する。
色が緑なのに「青」汁としているのは、緑色野菜を「青菜」などと表現する、暗色に類する色を「あお」とする日本語古語に基づく用法である。
元々は、戦時の食糧難の対策の一環として食されていた摂取しにくい食べ物を摂りやすくする目的で考案されたので、その時でも身の回りにあって余りやすい大根の葉などの緑葉食を用いた青汁が主だった。その後、食糧難が解消し、摂取は効率的な栄養の補給以上の意味を持たなくなったため、多くの栄養をバランスよく含んだケールを使った青汁が主になる。その後、品質・食味の改良や多種化が進み、最近は大麦若葉・小松菜・ヨモギ・抹茶等の原材料を使い食味を改善したものやモリンガ、ボタンボウフウ(長命草)など栄養素を補強できる材料を加えたものが増えている。
栄養価が高いことから草食・雑食の爬虫類、動物プランクトンなどのペットの常用食や、病気療養食として使われることもある。液状のためスポイトやシリンジを使っての強制給餌にも使い易い。
用法編集
液状の製品はそのまま、粉末の製品は水を加えて飲むのが基本である。
だが現在はそれだけでなく、飲みにくさを軽減するため粉末を牛乳やスープに溶かしたりヨーグルトに混ぜる、クッキーやホットケーキ生地に混ぜて焼くなど飲みにくさを補うための工夫した使い方も存在する。
このような家庭単位での努力だけではなく、企業が販売する商品にも果汁を添加して飲みやすくした「フルーツ青汁」、蜂蜜を加えた「蜂蜜青汁」などの飲みにくさを改善する努力が見られる。これらは基本的に水を加えて飲む。
歴史編集
1943年(昭和18年)、遠藤仁郎によって青汁が創案される。飢えを凌ぐために食していた葉が食べにくいという経験と、液体ならば摂取しやすいのではないか、という遠藤仁郎の考えの下開発された[7]。当時は現代で親しまれている『あおじる』ではなく『あおしる』と遠藤仁郎の妻ヒナ子によって命名された[8]。
1945年(昭和20年)、遠藤仁郎が倉敷中央病院に赴任。これを青汁という栄養食を広めるいい機会と思った仁郎が病院食に採用する。しかし、あまり一般には受け入れられず、効果を感じた者の口コミで少しずつ評判が広がる程度だった。
1954年(昭和29年)ケールを採用した青汁が開発される。これに従って作った青汁を特別に遠藤青汁と認定し、今でも特にこれだけに拘って販売する企業も存在する[9]。
1978年(昭和53年)、キューサイの前身である長谷川製菓株式会社の創始者が体調を崩した際、青汁を飲みこの効果に感銘を受ける。その後、自らと同じように多くの人に効果を実感して欲しいと思った創始者は遠藤仁郎の下を訪れ、青汁のノウハウを学ぶ。[10]
1982年(昭和57年)9月、キューサイの前身である長谷川製菓株式会社が、青汁の製造販売を開始。1980年代から1990年台前半は、一部の健康に強い関心がある人や、いち早く商品化したキューサイのCMが流れる九州地方でのみ知られるマイナーなものだった。
それまで九州限定だったキューサイの全国CMでの、八名信夫の「まずい!もう一杯!」発言をきっかけに全国に知られるようになる。なお、この台詞は台本通りではなく、撮影時あまりの不味さに思わず出た言葉が採用された。
以降も健康ブームや野菜不足が言われる中で消費を伸ばし、様々な会社が青汁を生産するようになった。1990年代以降は『笑っていいとも!』を皮切りにバラエティ番組の罰ゲームとしても使用されるようになり、知名度は若年層にも大きく上がるようになった。
一方、2000年代以降に発売された青汁は原材料を工夫して食味の改良が進んでおり、かつてのような青汁特有の味や青臭さは抑えられ、飲みやすくなっている。さらに、蜂蜜を加えて飲みやすくした蜂蜜青汁やフルーツエキスを加えて飲みやすくしたフルーツ青汁も人気を得るようになった。この背景には、ユーザー層の若返りや青汁のマイナスイメージの打開がある[11]。
2010年代になるとさらに、乳酸菌、カテキンなどの成分、モリンガ、ボタンボウフウ等の栄養価の高い素材を加えて機能性を向上させ、差別化を図った製品が作られるようになった。
安全性編集
個々の製品によって原材料や含有成分が異なるため、安全性は製品によって異なるが、肝機能障害など複数の健康被害の報告がある[5]。同時にいくつもの青汁製品やビタミン、ミネラルなどのサプリメントを併用することは、避けるようにする[3]。
ビタミンK(血液凝固に寄与)を多く含むものはワルファリン(抗凝固薬)の働きを悪くする恐れがあるため、ワルファリンを飲んでいる患者の青汁の摂取は注意が必要である[6]。ワルファリンは、ビタミンKの作用を阻害することで血を固まりにくくする薬であり、納豆、青汁、クロレラなどビタミンK含有量の多い食品を食べると、ワルファリンの働きが弱まって血の塊ができやすくなる恐れがある[12][3]。
脚注編集
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ a b c d e 青汁の健康効果って? - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- ^ “中村宜督、食品に見る 機能性成分のひみつ(第28回)青汁の材料として有名な葉野菜 スルフォラファンとルテイン ケール”. 女子栄養大学出版部. 2022年6月2日閲覧。
- ^ a b c d 青汁 - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- ^ a b “ワーファリン錠 添付文書”. PMDA医薬品医療機器総合機構. 2022年6月2日閲覧。
- ^ 遠藤青汁大阪研究所
- ^ 遠藤青汁高知センター
- ^ [ https://www.aoshiru.com/endohakase.htm 遠藤仁郎博士・青汁の創始者]
- ^ QSAI 創業時から変わらない想い
- ^ 前述した『いいとも!』の罰ゲームでは、あまりのまずさに出演者が飲みきれない、吐いてしまうというハプニングもしばしば起きていた(以降、罰ゲームではセンブリ茶やノニジュースなど新たな商品が使われるようになった)。
- ^ ナットウ (納豆)、ナットウ菌 - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- ^ “健康食品の青汁を摂取し, 高カリウム血症にて搬送された1例”. 日本救急医学会関東地方会雑誌/41 巻 (2020) 2 号. 2022年6月2日閲覧。
- ^ “サプリメントの摂取 透析を受けている人がサプリメントを摂る場合に、注意することはありますか? (PDF)”. 公益財団法人 日本腎臓財団. 2022年6月2日閲覧。
- ^ “高カリウム血症”. MSDマニュアル家庭版. 2022年6月2日閲覧。
関連項目編集
外部リンク編集
- 青汁 - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- 青汁の健康効果って? - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- ケール - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- オオムギ - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- アシタバ - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- モロヘイヤ - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- クロレラ - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- 桜木町の駅そば「川村屋」の青汁は、日本で初めて作られた由緒ある青汁 はまれぽcom.